今回お伝えするのは「高齢者のてんかんについて」です。
高齢者のてんかん|年齢で変わる治療の考え方
てんかんの発症には、小児期と高齢期に2つのピークがあります。同じてんかんでも、年齢によって発作の特徴、原因、治療の考え方が大きくことなります。
今回は、高齢者のてんかんについて、脳神経内科医専門医がわかりやすく解説します。
【この記事の要約】
- てんかんの発症は小児だけでなく高齢期にもピークがあり、年齢によって治療の考え方が大きく変わります。
- 高齢者のてんかんは認知症と症状が似ていることがあり、治療法がことなるためしっかりと区別することが重要です。
- 高齢者のてんかんは増えてきていますが、適切に診断されれば薬がよく効くことが多いです。
高齢者のてんかん——増えている病気
てんかんは子どもの病気というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、高齢期はてんかん発症のもう一つのピークなのです。
65歳を超えると、100人に1人以上がてんかんを発症するといわれています。高齢化が進む中で高齢者のてんかんは増加しています。
高齢者のてんかんが増える背景には、加齢に伴って脳に何らかの変化が起こりやすくなることがあります。
高齢者てんかんの原因として最も多いものが脳卒中の後遺症で、原因の3〜4割を占めます。次いで頭部外傷、アルツハイマー型認知症、脳腫瘍などが続きます。
一方で、原因がはっきりしないケースも3割ほどあります。
認知症と間違われやすい高齢者てんかん
高齢者のてんかんで注意が必要なことが、認知症と間違われやすいという点です。
高齢者のてんかんでは、急にぼーっとして反応しなくなる、しばらく無言で口をもぐもぐ動かす、その間の出来事を覚えていない、発作の後しばらく混乱状態が続く、といった症状が短時間、繰り返し起こります。全身をこわばらせるような発作はみられないことがあります。
これらの症状は認知症とよく似ているため、ご家族から「最近、急に物忘れがひどくなった」「ぼーっとしている時間が増えた」と認知症と誤解されることが少なくありません。
しかし、これがてんかんによる症状であった場合、適切な治療で症状が大きく改善することがあります。
認知症とてんかんを見分けるポイントは、症状の現れ方です。認知症による物忘れは数か月から数年をかけて徐々に進み、一日を通じて症状がほぼ一定です。
一方、てんかんによる症状は、ある瞬間から急に始まり、数分から数十分で元に戻り、それが繰り返されます。
「普段はしっかりしているのに、ときどき数分だけ様子がおかしくなる」という波のあるパターンに気づいたら、てんかんの可能性を一度考えてみていただきたいと思います。
高齢者のてんかんは薬がよく効くことが多い
高齢者のてんかんは適切に診断されれば薬がよく効くことが多いです。若い方と比べて少ない量の薬で発作が抑えられることが多く、発作が止まることで、認知機能の低下と思われていた症状が改善することもあります。
ただし、高齢者のてんかん治療では、腎臓や肝臓の働きの低下に応じた薬の量の調整、他の病気で飲んでいる薬との飲み合わせの確認、副作用への注意など、若い方と異なる配慮が必要です。近年は他の薬との相互作用が少なく副作用も比較的軽い新しい抗てんかん薬が増えています。高齢者の生活の質を守るためにこそ、適切な治療が大切です。
当院では、ライフステージに応じたてんかん治療をご提供しています。「現在の治療を見直したい」「セカンドオピニオンを聞いてみたい」「家族のことで気になることがある」など、どのようなきっかけでも構いません。脳神経内科専門医として、お一人おひとりの人生に寄り添ったてんかん診療を行っております。
よくある質問(FAQ)
Q. 高齢の親が認知症かと思ったらてんかんでした。よくあることですか?A. はい。高齢者のてんかんは認知症と症状が似ていることがあり、誤解されやすいです。短時間ぼんやりして直後を覚えていないといった症状が繰り返す場合は、てんかんの可能性があります。適切な治療で改善することがあります。
Q. 高齢でもてんかんの薬は飲めますか?
A. 飲むことができます。高齢者のてんかんは少ない量の薬でよく効くことが多いです。腎臓・肝臓の働きや他の薬との飲み合わせに配慮した治療を行うことができれば、発作を抑えられます。
Q. 高齢の親がてんかんと診断されました。車の運転はどうすればいいですか?
A. 年齢にかかわらず、発作があった場合は最終発作から2年間の運転自粛が原則です。ご高齢の方では、これを機に運転の卒業を検討することも選択肢です。