このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。
今回お伝えするのは「薬剤抵抗性てんかんについて」です。
薬剤抵抗性てんかんとは? 薬が効かないときの選択肢
「何種類か薬を試したけれど発作が止まらない」「薬を増やしても発作の頻度が変わらない」——そんなお悩みを抱えていませんか?
今回は、薬で発作が抑えられない「薬剤抵抗性てんかん」とは何か、その先にある治療の選択肢を、脳神経内科専門医がわかりやすく解説します。
【この記事の要約】
- 2種類以上の薬を十分な量と期間で試しても発作が止まらない状態を「薬剤抵抗性てんかん」と呼び、患者さん全体の約3割が該当します。
- 薬剤抵抗性てんかんは治療ができないわけではなく、診断の見直し・薬の組み合わせ・外科的治療など複数の選択肢があります。
- 専門医による治療の再評価で、長年止まらなかった発作が抑えられるようになるケースもあります。
薬剤抵抗性てんかんとは
薬剤抵抗性てんかんとは、「適切な2種類以上の抗てんかん薬を、十分な量・十分な期間(1年以上)試しても発作が止まらない状態」を指します。
てんかん患者さん全体のうち、およそ3割の方がこの状態にあたるといわれており、決して珍しいことではありません。
「薬剤抵抗性てんかん」と呼ばれる状態であっても、それが一生発作と付き合うしかないということを意味するわけではありません。
そのような場合は専門医による丁寧な治療の見直しが必要な段階なのです。
「効かない」と決める前に確認すべきこと
「薬が効かない」と感じている方の中には、実は薬剤抵抗性てんかんではなく、別の理由で発作が抑えられていないケースが少なくありません。
専門医がまず確認するのは、次のような点です。
発作が止まらないとき、見直すべき4つのポイント
- てんかんという診断そのものが正しいか(失神や心因性発作など、てんかん以外の可能性)
- 発作のタイプの見立てが正確か
- 薬が適切な量・十分な期間で使われているか
- 薬の飲み忘れや、睡眠不足・飲酒などの誘因が放置されていないか
これらを一つひとつ丁寧に検討したうえで、それでも発作が抑えられない場合に真の薬剤抵抗性てんかんと判断します。効かないとされてきた治療が、こうした見直しによって発作が抑えられるようになるケースもあります。
薬が効かないときの3つの選択肢
薬剤抵抗性てんかんと判断された場合でも、治療の選択肢は決して尽きていません。
実際の診療では、次の3つを段階的に検討していきます。
① 診断・発作タイプの見直し
最初に行うべき、そして最も重要なステップです。てんかん以外の病気ではないか、発作のタイプの見立ては正確か。ここを丁寧にやり直すだけで治療が大きく前進することがあります。
② 薬の組み合わせの工夫
1種類の薬では効果が不十分でも、作用の仕組みが異なる薬を組み合わせることで、発作を抑えられることがあります。
ただし薬を増やせば増やすほど効果が上がるわけではなく、薬同士の相互作用や副作用の重なりで生活の質が損なわれることもあります。「組み合わせる薬の選び方」「それぞれの量のバランス」を慎重に検討することが必要です。
近年は新しい抗てんかん薬が登場しており、薬剤抵抗性とされていた方でも、新しい薬の追加や切り替えで発作が抑えられるようになるケースが増えています。
何年も前に「効く薬がない」と言われた方でも、現在では使える選択肢が広がっている可能性があるのです。
◆ ③ 外科的治療(手術)
薬の組み合わせを十分に試しても発作が抑えられない場合、外科的治療が次の選択肢として検討されます。
発作を起こしている脳の場所がはっきり特定でき、その部分を取り除いても重要な機能に支障が出ないと判断された場合、手術によって発作が止まる可能性があります。
発作が続いている方に知っておいてほしいこと
発作が抑えきれていない状態が続くと、転倒によるけがや事故のリスクが高まるだけでなく、外出や活動を控えるようになり、生活の幅が少しずつ狭まっていきます。
発作があるから仕方ないとあきらめてしまう前に、治療の見直しによってその状況を変えられないかを検討することには、大きな意味があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 薬剤抵抗性てんかんは治らないのですか?A. 診断や薬の見直し、薬の組み合わせの工夫、外科的治療など複数の選択肢があり、発作が抑えられるようになる方もいます。
Q. 今の治療で発作が止まりません。転院するべきですか?
A. 長年同じ治療で発作が止まらないのであれば、一度治療を見直す価値があります。
てんかんの中にはどうしても薬で発作を十分に止めることができない場合もありますが、専門医の評価を受けることで、新たな選択肢が見つかることがあります。
Q. てんかん発作が5分以上続くときはどうすればいいですか?
A. すぐに救急車を呼んでください。発作が5分以上続く場合や、意識が戻らないまま発作を繰り返す場合は早急な治療が必要です。
「長年治療を受けているけれど発作が完全には止まらない」「もうあきらめかけている」——そんな方こそ、ぜひご相談ください。当院では脳神経内科専門医が、これまでの治療経過をじっくり伺い、必要に応じて専門施設と連携しながら、新たな選択肢をご提案いたします。