このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。
今回お伝えするのは「頭痛がないときの不安について」です。
「また頭痛が来たらどうしよう」——その不安が、あなたの世界を狭めていませんか?
頭痛そのものより、「頭痛がまた来るかもしれない」という不安のほうが、日常生活に影響をおよぼしていることがあります。
痛みがない日も、片頭痛に時間を奪われている
片頭痛で失われる時間は、頭痛発作中の「動けない時間」だけではありません。
「遠出したいけど、途中で頭痛が起きたら困る」
「大事な会議の前日は、不安で眠れなくなる」
「友人の誘いを何度も断ってばかりで申し訳ない」
こうした頭痛発作への不安が、痛みのない日の行動まで制限してしまいます。
旅行の計画を立てることをやめてしまった。
子どもの行事に参加して楽しむことができない。
昇進や新しい仕事の話を「頭痛があるから無理かも」と諦めた。
そんな経験はありませんか?
これは決して「気の持ちよう」や「心配しすぎ」ではありません。慢性的な片頭痛を抱える方に広く見られる回避行動と呼ばれるものです。
「また痛くなりたくない」という気持ちが、無意識のうちに行動範囲を狭めていくのです。
あなたが、知らないうちに失っているもの
片頭痛による生活の制限は、積み重なると驚くほど大きな損失になります。
仕事・キャリアへの影響:欠勤や早退、集中力の低下による業務効率の悪化。本来のパフォーマンスを発揮できず、評価や昇進の機会を逃してしまうことも珍しくありません。
人間関係への影響:誘いを断り続けることで、友人との距離が少しずつ開く。家族との外出や旅行を避けることで、本来作れたはずの大切な思い出ができなくなってしまう。
心への影響:「また迷惑をかけてしまう」「自分だけ楽しめない」という罪悪感がたまり、抑うつや不安障害につながるケースもあります。
頭痛の回数が多い方ほど、こうした影響は深刻です。しかし、これらは決して「片頭痛持ちだから仕方がない」と諦めるべきものではありません。
治療で、生活は取り戻せる
適切な治療を受けることで、多くの方が「頭痛を気にせずに動ける生活」を取り戻しています。
現在の片頭痛治療には、発作を素早く止める「急性期治療」と、発作そのものの頻度を減らす「予防療法」があります。予防療法がうまくいくと、「月に何度も寝込む」状態から「たまに軽い頭痛がある程度」へと改善するケースは珍しくありません。
さらに近年登場したCGRP関連抗体薬は、従来の薬で効果が不十分だった方にも有効なケースが多く、片頭痛治療の可能性を大きく広げました。月1回の注射で予防効果が続く画期的な治療方法です。
大事なことは、頭痛発作の回数が減ると、自然と「また頭痛が来たら」という不安そのものが薄れていくということです。仕事への意欲、外出の楽しみ、大切な人と過ごす時間が、少しずつ戻ってきます。
「我慢する病気」ではなくなりました
片頭痛は今でも「なんとなく我慢するもの」と思われがちですが、医学は確実に進歩しています。あなたに合った治療が見つかる可能性は、思っているよりずっと高いのです。
「どうせ治らない」と思う前に、一度専門医に現状を話してみてください。頭痛のせいで諦めてきた予定や夢を、もう手放さなくていい日が来るかもしれません。
行きたい場所に行ける。会いたい人に会える。そんな当たり前の毎日を、あなたも取り戻してみませんか。
当院では、片頭痛の予防療法・最新治療にも対応しています。「ずっと我慢してきた」という方こそ、お気軽にご相談ください。