このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。 今回お伝えするのは「片頭痛と感覚過敏について」です。
「光がまぶしい、音がうるさい、においがつらい」——片頭痛と感覚過敏のつらさ
片頭痛は「頭が痛い」だけの病気ではありません。普段なら気にならない光・音・においが、耐えがたい苦痛になることがあります。
「片頭痛は痛みだけじゃない」——感覚過敏というもう一つのつらさ
頭痛発作の最中、こんな経験はありませんか?
「部屋の電気がまぶしくて目を開けていられない」 「家族の話し声がうるさくて耳を塞ぎたくなる」 「料理のにおいで吐き気が増す」
これらは感覚過敏と呼ばれる症状で、片頭痛の重要な特徴の一つです。
なぜ感覚過敏が起きるのか
片頭痛の発作中、脳は通常とは異なる過敏な状態になっています。三叉神経が過剰に興奮し、CGRPという物質が放出されることで、脳全体が刺激に対して敏感に反応するようになるのです。
こうして、光、音、においの刺激に対して過敏に反応してしまい、痛み以外にもつらい症状を起こしてしまいます。
片頭痛における過敏症は「気のせい」でも「気にしすぎ」でもありません。
3つの感覚過敏とその特徴
【光過敏(羞明)】
片頭痛患者さんの半数以上が、発作中に光を強くまぶしく感じると報告されています。蛍光灯、スマートフォンやパソコンの画面、日光、車のヘッドライトなどが引き金となり、「目を開けていられない」「画面を見られない」「カーテンを閉めて真っ暗にしないと耐えられない」という状態になります。発作前から光に敏感になることもあり、頭痛の予兆としてあげられます。
【音過敏】
家族の話し声、テレビの音など、普段はまったく気にならない音が、激しい苦痛に感じられます。「静かな場所に逃げ込みたい」という強い衝動の背景には、この音過敏があります。発作が強くなるほど、音過敏も強まる傾向があります。
【嗅覚過敏(においへの過敏)】
香水、タバコ、料理のにおい、洗剤や柔軟剤の香りなど、においは発作を引き起こす引き金にもなれば、発作中に症状を悪化させる要因にもなります。「人の香水で頭が痛くなる」「料理を作っているうちに気分が悪くなる」と感じる方は、嗅覚過敏が起きている可能性もあります。
発作中の実践的な対処法
・光への対処
発作が始まったら、カーテンを閉めた暗い部屋で休みましょう。外出時はサングラスや帽子が役立ちます。日常的には、自宅の照明を白色蛍光灯から暖色系のLEDに変える、スマートフォンやパソコンの輝度調整を行うことでも刺激は軽減されます。
・音への対処
耳栓やノイズキャンセリングイヤホンは強力な味方です。職場や家庭で、発作時に静かな場所で休める環境を事前に整えておくことも大切です。
・においへの対処
予兆を感じたら、強いにおいの場所からすぐに離れましょう。こまめな換気だけでも症状は和らぎます。ふだんから、無香料の柔軟剤や洗剤を選ぶことで、発作の引き金そのものを減らすこともできます。
感覚過敏も「治療で改善できる」症状です
感覚過敏は、頭痛発作の頻度が多いほど強くなる傾向があります。
予防療法によって頭痛発作の回数を減らすことができれば、感覚過敏に苦しむ機会も自然と減っていきます。
「光や音が怖くて外出できない」「職場でパソコン画面を見続けられない」「人混みやデパート、映画館が苦手」——こうした生活上の制限は、適切な治療で改善が期待できます。
受診の際は、痛みのことだけでなく、「光・音・においへの過敏」も合わせて医師にお伝えください。正確な診断と、あなたに合った治療選択への大切な手がかりになります。
当院では、感覚過敏を含む片頭痛の症状全般に対応しています。「光や音にも悩まされている」という方こそ、ぜひお気軽にご相談ください。