てんかんの日常生活の注意点について|一宮市の脳神経内科|あたまと内科のうえだクリニック

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てんかんの日常生活の注意点について

このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。
今回お伝えするのは「てんかんの日常生活の注意点について」です。

てんかんの日常生活の注意点|睡眠・飲酒・入浴・運動


てんかんと診断されると「あれもダメ、これもダメ」と生活を厳しく制限しなければと考えがちです。しかし実際のてんかん診療は「過度な制限をせず、生活の質を保ちながら発作と上手に付き合う」という考え方です。この記事では、睡眠・飲酒・入浴・運動を中心に、日常生活の具体的な工夫を脳神経内科医専門医がわかりやすく解説します。


【この記事の要約】

  • てんかんの日常生活管理は制限を増やすのではなく「リスクを下げる工夫を取り入れる」ことが基本です。
  • 睡眠を十分にとることが最も大切であり、飲酒は発作が安定していれば適量なら可能、適度な運動はむしろ推奨されます。
  • 入浴は事故が起こりやすいため注意が必要です。自分の誘因パターンを知ることが対策の第一歩です。

 

まず知っておきたい「発作の誘因」

日常生活で気をつけるべきことを考える上で重要になってくることは「発作の誘因」です。誘因とは、発作を起こりやすくする条件のことです。
代表的なものとして、睡眠不足、過度の飲酒、ストレスや過労、体調不良、そして薬の飲み忘れが挙げられます。


このうち睡眠不足と薬の飲み忘れは、ほぼすべての患者さんに共通して影響する二大要因です。一方、ストレスや飲酒がどの程度影響するかは個人差が大きく、まったく影響を感じない方もいらっしゃいます。つまり、すべての誘因をすべての患者さんが避けるべきというわけではないのです。

 

睡眠——最も大切な日常習慣

数ある誘因の中でも、ほぼすべての患者さんに共通して影響するものが睡眠不足です。睡眠不足は、てんかん発作を引き起こす代表的な誘因であり、一晩の寝不足だけで発作が誘発される方もいます。


睡眠で守りたいことは、毎日同じ時間に寝起きすること、6〜8時間の睡眠を確保すること、の2点です。
週末に夜更かしして昼まで寝るといった生活は体内時計を乱し、月曜の朝に発作が起きやすくなる原因になります。


夜勤や交代勤務は睡眠リズムを大きく乱すため、できれば避けたい働き方です。とはいえ、お仕事の都合ですぐには変えられない方も多いでしょう。
その場合は勤務パターンを主治医にお伝えいただければ、薬を飲むタイミングの調整など、現実的にできる工夫を一緒に考えていくことができます。


飲酒——禁止ではないが慎重に

てんかんがあるからといって、お酒を一滴も飲んではいけないわけではありません。アルコールによって、てかん発作が引き起こされることはありますが、アルコールだけでなく睡眠不足や薬の飲み忘れといった要因が重なって発作のリスクが高くなっていることが多いです。

発作が安定してコントロールされている方であれば、少量のお酒を楽しむことは可能です。


ただし、過度の飲酒は明確に発作の誘因となります。個人差が大きいですが、目安はビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス1〜2杯程度です。
注意していただきたいのは、発作が起こりやすいのは飲んでいる最中よりも、むしろ深酒した翌朝や二日酔いの状態だという点です。アルコールが抜けていく過程で脳が興奮しやすくなるうえ、飲んだ日は睡眠の質も低下しがちで、発作のリスクが高まります。


また、お酒は抗てんかん薬の効き方に影響し、眠気やふらつきが強く出ることがあります。

 

入浴——最も注意すべき場所の一つ

てんかん患者さんにとって最も発作による事故が起こりやすい場所の一つが「お風呂」です。浴槽の中で発作が起きると、意識を失った状態で水に沈み、溺れる危険があります。

ただし、これは「お風呂に入ってはいけない」という意味ではありません。入り方を少し変えるだけで、リスクは大きく下げられます。


入浴中の事故を防ぐ工夫

  • お湯を浅めに張る、または半身浴・シャワー中心にする
  • 家族のいる時間帯に入浴し、時々声をかけてもらう
  • 浴室の戸は鍵をかけずに入る
  • 一人暮らしの方は日中の元気な時間帯にシャワーで済ませる

 

特に「鍵をかけない」という一点は、費用も手間もかからないのに、万一のときにご家族がすぐ助けに入れるかどうかを分ける重要な工夫です。ぜひ今日から取り入れていただきたいと思います。


運動——積極的に取り入れたい

てんかんがあるから運動は控えたほうがいいというのは誤解です。適度な運動はストレス解消になり、睡眠の質を高め、気分の安定にもつながります。これらはすべて発作のリスクを下げる方向に働き、運動中はかえって発作が起きにくいというデータもあります。
ウォーキング、ジョギング、ストレッチ、ヨガ、軽い筋トレなど、ほとんどの運動は問題なく行えます。


注意が必要なのは、運動そのものが発作を招くからではなく、万一発作が起きたときに大事故につながる状況です。
水泳、高所での活動、交通量の多い道での自転車、スキューバダイビングなどがこれにあたります。水泳は必ず付き添いや監視のある環境で行い、単独では泳がないようにしてください。
こうした活動を続けるかどうかは、発作のコントロール状況に応じて主治医と相談しながら判断します。

 

「制限」ではなく「工夫」で生活を守る

ここまでの内容を振り返ると、てんかんの日常生活管理の本質は「やってはいけないことを増やす」のではなく「リスクを下げる工夫を取り入れる」ことだと感じていただけるのではないでしょうか。
睡眠をしっかりとる、お酒は適量にとどめる、入浴の方法を少し変える、運動は積極的に取り入れる——こうした工夫の積み重ねで、発作のリスクを下げながら生活の質を保つことができます。


そして何より大切なのは、ご自身固有の誘因や注意点を知ることです。すべての患者さんに同じルールが当てはまるわけではありません。発作のタイプ、コントロールの状況、生活パターン、お仕事の内容、年齢、性別——こうした要素をすべて踏まえて、その方に合った具体的な生活指導を行うことが、専門医の役割の一つです。

よくある質問(FAQ)

Q. てんかんがあるとお風呂に入れないのですか?
A. 入れます。ただし入浴中に発作が起こると溺れる危険があるため、お湯を浅めにする、半身浴やシャワー中心にする、家族のいる時間帯に入るなどの工夫でリスクを下げられます。

Q. お酒は飲んでもいいですか?

A. 発作が安定していれば少量なら可能なことが多いです。ただし過度の飲酒は発作の誘因になり、薬との相性もあるため、ご自身の状況を主治医に確認してください。

Q. 運動は控えたほうがいいですか?

A. むしろ適度な運動は推奨されます。ほとんどの運動は問題なく行えます。水泳や高所での活動など一部の活動は、発作のコントロール状況に応じて主治医と相談しましょう。

Q. ゲームやスマホの光で発作が起きることはありますか?

A. 光の点滅で発作が誘発される「光過敏性」を持つ方は、てんかん患者さんの一部にいらっしゃいます。該当する方は、画面を明るい部屋で見る、長時間の連続使用を避ける、疲れているときは控えるといった工夫が有効です。ご自身に光過敏があるかは主治医にご確認ください。

 

「自分の生活パターンで気をつけることはあるか」「こんなときはどうしたらいいか」——こうしたご質問は、診察の際にどうぞ遠慮なくお聞きください。
当院では脳神経内科専門医が、お一人おひとりの生活状況に合わせた、現実的で実行可能な生活指導をご提案しています。