このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。 今回お伝えするのは「片頭痛とマグネシウムの関係」です。
「マグネシウム不足」が片頭痛を悪化させている?——食事とサプリメントの活用
「薬だけに頼らず、片頭痛を予防したい」——そんな方にこそ知ってほしい、マグネシウムと頭痛の関係です。
片頭痛患者の約30%は、マグネシウム不足
マグネシウムは、神経の興奮を抑え、血管の収縮・拡張を整える働きを持つ必須ミネラルです。体内で300種類以上の酵素反応に関わり、片頭痛の原因となる「血管の異常な拡張」と「神経の過剰な興奮」のどちらにも抑制的に働くと考えられています。
実際、片頭痛患者さんの血液中や脳内のマグネシウム濃度は低い傾向があり、患者さんの約30%がマグネシウム不足であると報告されています。
現代の生活は、マグネシウムを失いやすい環境です。ストレス、睡眠不足、過労、アルコール、白米や白パン中心の食生活——こうした要因が、マグネシウムを消耗させています。「特に変わったことはしていないのに頭痛が増えた」という方は、ミネラル不足が背景にあるかもしれません。
マグネシウムの予防効果には研究の裏付けがある
マグネシウムの片頭痛予防効果は、複数の臨床試験で確認されています。
18歳から65歳を対象にした海外の研究では、マグネシウム600mg/日を12週間投与したところ、片頭痛の発作頻度が約42%減少(プラセボ群は約16%)と、明確な差が報告されました(Peikert et al. Cephalalgia 1996.16:257–263)。
こうした結果を踏まえ、日本頭痛学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」でも、マグネシウムは片頭痛予防に有効である可能性のある補助療法として記載されています。ただし、ガイドラインでは「弱い推奨」であり、第一選択の薬の代わりにはなりません。あくまでも補助療法の位置づけです。
日本では保険適用外——食事やサプリメントでとる
日本では、マグネシウムの片頭痛予防への使用は保険適用外であり、保険診療で片頭痛に対してマグネシウム製剤を使うことはできません。しかし、サプリメントでマグネシウムを摂取する方法が注目されています。
①食事から摂る——日本人になじみのある食品が豊富
まず大切なのは、毎日の食事から自然に摂ることです。日本の食卓には、マグネシウムを多く含む食品が実はたくさんあります。
- 海藻類:わかめ、ひじき、のり、昆布
- 大豆製品:納豆、豆腐、味噌、きなこ、枝豆
- ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ、くるみ
- 緑黄色野菜:ほうれん草、小松菜、ブロッコリー
- その他:玄米、雑穀米、バナナ、ひじき、ごま
朝食を「ごはん・味噌汁・納豆・のり」にする、おやつに素焼きアーモンドを食べる——こうした小さな工夫で、マグネシウムを補うことができます。
②サプリメントで補う——目安と注意点
食事だけで不足が補えない場合、サプリメントの活用も選択肢になります。研究で使用された目安量は1日300〜600mgですが、最初は少量(200〜300mg程度)から始めて、体の反応を見ながら調整するのが安全です。
サプリメントを利用する際の注意点は次の通りです。
- 過剰摂取で下痢を起こすことがあるため、お腹の調子を見ながら量を調整する
- 腎機能に問題がある方は高マグネシウム血症のリスクがあるため、必ず医師に相談する
- 他の薬を飲んでいる方(一部の抗生物質や骨粗鬆症の薬など)は相互作用に注意
「自分に合うかわからない」という方は、サプリメントを購入する前に主治医に確認すると安心です。
サプリメントだけで片頭痛を治そうとしないで
マグネシウムはあくまでも補助的な手段です。月に何度も頭痛発作があったり、日常生活に支障が出ていたりする場合には、急性期治療や予防薬による治療が優先されます。
「薬は使いたくない」という気持ちはとてもよくわかります。しかし、頭痛を我慢し続けることは慢性化のリスクを高めてしまいます。マグネシウムの補充と並行して、専門医に相談することで、より効果的な頭痛コントロールが可能になります。
サプリメントを始める前にも、現在の頭痛の状態や服用薬との関係について、ぜひ一度ご相談ください。
当院では、生活習慣の改善や栄養面からのアドバイスを含めた片頭痛の総合的な治療に対応しています。お気軽にご相談ください。