このコラムでは脳神経内科専門医が体調や健康に関する情報をわかりやすくお伝えします。
今回お伝えするのは「片頭痛とストレスの関連」です。
ストレスは片頭痛の最大の引き金
約60〜80%の片頭痛患者さんが、ストレスがかかったときに発作が起きやすいと自覚しています。仕事のプレッシャー、人間関係の緊張、将来への不安——こうした精神的なストレスは、気圧の変化や月経と並んで片頭痛の代表的な誘因です。
ストレスを受けると、脳内ではセロトニンという物質が急激に変動します。セロトニンが減少すると三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出され、血管の拡張と炎症が起きて、あのズキズキした痛みが生じます。
慢性的なストレスはセロトニンを徐々に枯渇させ、脳を痛みに対してどんどん過敏にしていきます。「最近、ちょっとしたことで頭痛が起きやすい」と感じている方は、この状態に陥っている可能性があります。
「ほっとした瞬間」に頭痛が来る——その仕組み
片頭痛持ちの方の多くが経験する、少し不思議な現象があります。それはストレスから解放されたときに頭痛が起きるというものです。
- 大事な仕事が終わった金曜の夜
- 締め切りを乗り越えた直後の夕方
- 楽しみにしていた旅行の初日
「頑張っているときは元気なのに、休もうとしたときに頭が痛くなる」——こんな経験、ありませんか?
これは「レットダウン頭痛」と呼ばれる現象です。ストレス下では交感神経が優位になり、アドレナリンが分泌されて脳血管は緊張した状態に保たれています。それが一気に解放されると、副交感神経への急激な切り替えが起こり、血管が反動で拡張して片頭痛が誘発されるのです。
つまり、これは意志の弱さでも気のせいでもなく、脳が起こす自然な生理反応です。「自分はリラックスが下手だから」と考える必要はありません。
ストレスが慢性化すると、頭痛も慢性化する
一時的なストレスによる頭痛は、ある意味で脳からの警告サインです。しかし、ストレスが長期化すると問題はより深刻になります。
長く続くストレスによって、片頭痛の発作頻度が徐々に増えていきます。「月に数回だった頭痛が、いつの間にか週に何度も起きるようになった」——その背景に、慢性的なストレスが潜んでいるケースは少なくありません。
ストレスと付き合いながら、頭痛を減らすために
ストレスそのものをゼロにするのは現実的ではありません。だからこそ大切なのは、ストレスへの脳の反応をコントロールするという視点です。
- 自分のパターンを知る
頭痛日記に「どんなストレスのときに頭痛が起きるか」を記録すると、自分だけのトリガーが見えてきます。
- 「移行時間」を意識的に作る
大きな仕事や行事の後は、急にゆるむのではなく、入浴・軽い散歩・ストレッチなど緩衝になる時間を入れましょう。これだけでもレットダウン頭痛を減らせます。
- 日常的にストレスをこまめに発散する
ため込んでから一気に解放するのではなく、毎日少しずつ発散する習慣が頭痛予防にもなります。
- 脳内のセロトニンを増やす習慣
朝に太陽光を15分から30分程度浴びる、ウォーキングなどリズミカルな運動、セロトニンの原料(トリプトファン:大豆製品、魚類、ナッツ類など ビタミンB6:魚、肉類、バナナなど)を食べることもストレスのコントロールに有効です。
生活改善「だけ」では限界があるとき
生活習慣の工夫だけで頭痛をコントロールできない方が多いことも現実です。月に何度もストレスをきっかけに頭痛が起きる方、痛みで仕事や生活に支障が出ている方には、予防薬による治療が大きな助けになります。
CGRP関連薬など新しい治療を継続することで、「ストレスがかかっても以前のように頭痛が起きにくくなった」と話される患者さんが増えています。
「ストレス社会だから仕方ない」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。あなたに合う治療と、生活との両立を一緒に考えていきましょう。
当院の脳神経内科では、片頭痛の予防療法を含む総合的な治療に対応しています。「ストレスのたびに頭痛が起きる」「頑張った後に必ず頭痛が来る」という方も、安心してご相談ください。